討論主題と依頼講演

第81回討論会では、6件の討論主題を設定します。

討論主題の趣旨と依頼講演一覧 (PDF)

  1. ニューノーマルと分析化学
    オーガナイザー:火原彰秀(東北大多元研),西澤精一(東北大院理)
    新型コロナウイルス感染拡大は,社会に大きな影響を与え,直接的な感染拡大の状況には,引き続き高い関心が払われている。副次的なことであるが,働き方や会議のやり方など多くの面で急激な変化が起こった。この変化は単に感染拡大防止という防疫面を越えた,不可逆なインパクトを社会の各層に与えると考えられる。このいわゆる「ニューノーマル」とわれわれ研究者との接点を考えたとき,感染拡大や分析の現状の認識はもちろんのこと,新たに関心を集めるだろう分析サービス,遠隔会合などのための新しいツールを使いこなす理系人材イメージ・キャリアなど,われわれのマインドセットそのものを考え直すべきことがらも多いと想像される。本シンポジウムでは,上記のような各分野の様々な観点から,「ニューノーマル時代」の議論に役立つと思われる話題を幅広に選んだ。シンポジウム参加者それぞれが,自身の「ニューノーマル」を考えるきっかけとなることをめざし,そのガイドとなるような依頼講演をお願いした。
  2. 実行キーで始まる分析化学
    オーガナイザー:福山真央(東北大多元研)
    実験の自動・高速化、得られたデータの多変量解析による理解…など、プログラミングは分析化学研究を様々な角度から支えてきた。また近年、機械学習や人工知能の発展により、これまでとは異なる種類・質・量の実験データに基づく分析法が実現されている。同時に、Pythonなどの言語では様々なライブラリが提供されており、専門的な教育がなくても容易にプログラミングができる環境が整ってきた。一方で、分析化学研究においては、プログラミングはあくまでも縁の下の力持ちのような存在であり、明に議論する機会はほとんどなかった。本シンポジウムでは分析化学研究におけるプログラミングを中心的話題とし、プログラミングの環境や言語、実験とプログラミングの接続方法について等、分析化学的主題からは少し逸れるが分析化学を発展させるうえで重要な技術について共有・議論することを目的とする。依頼講演では研究のブレークスルーを支えたプログラミング技術やスクリプトについての話をお願いした。本シンポジウムが、分析化学者としてプログラミングとどのように付き合うか(または始めるか)を考えるきっかけになればと期待する。
  3. エクスポゾームと分析化学
    オーガナイザー:大江知行(東北大院薬)
    我々の体は、環境・食品中などの様々な化学物質・化学ストレスに恒常的に暴露(exposure)されている。一方、この様な暴露の生理的影響は、環境濃度などでは評価できず、暴露時間・時期、更には個人の代謝・排泄など様々な要因に左右される。そこで近年、個々人の暴露を定性・定量的に俯瞰する『エクスポゾーム』の概念が提唱されている。しかし、分析手法として尿・血液試料を用いたヘモグロビン、アルブミン、グルタチオン、DNA上の付加体解析などのアプローチがあるものの、まだ満足しうる方法論として確立されていない。そこで本シンポジウムでは、環境中・食品中などの化学物質の暴露を如何に評価していくかを、分析化学的観点で議論していきたい。依頼講演者には、疫学研究、暴露機構、分析法開発など多様な研究者をお招きし、分析法がどの様にブレークスルーに寄与できるかを議論したい。環境、食品、医療、機器・分析法開発など多彩な背景を持つ研究者の参加を希望する。
  4. 廃炉に貢献する分析化学
    オーガナイザー:高貝慶隆(福島大理工)
    2011.3.11東日本大震災を発端とする東京電力福島第一原子力発電所事故から10年が経過した。この間、放射性物質の拡散の調査を始め、安全な廃炉のための分析・分離技術が研究されてきたが、未だ多くの課題が残っており、分離・計測の観点から分析化学の果たす役割と期待は大きい。 本主題では、放射性物質の計測法、分離法、配位子や分離剤設計、環境調査結果、除染技術など,将来の廃炉指針につながる広義の意味での研究,技術開発や事例発表を広く募集する。
  5. SDGsと分析化学
    オーガナイザー:壹岐伸彦(東北大院環境)
    持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択されて5年経過し,行動計画の年限まであと10年となった。持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するために定められた17の目標,169のターゲットには,健康,水・衛生,エネルギー,物質循環,気候変動,海洋,生態など,分析法が必要不可欠なフィールドが数多い。そこには最先端の高度な計測法から誰でも普遍的に計測に参画できる簡易分析法まで,多様な分析ニーズが認められる。新常態への変革期にある現在,中長期的視点からSDGsに貢献し得る分析法やその基礎原理に関わる研究発表を広く募集し,Central Scienceとしての分析化学の役割を考える。
  6. 産業界に貢献する分析化学
    オーガナイザー:遠藤昌敏(山形大院理工)
    医療、環境、各種新素材開発等、様々な分野で持続的な発展が期待されている。幅広い領域が関わる各種産業界において、分析化学が生み出した各種前処理技術、分離技術、計測技術、解析法が果たしてきた役割は大きい。生産の現場においても研究開発、製品開発、品質管理、生産管理には分析技術は必要不可欠であり、迅速化、高精度化も求められている。
    本主題では、産業の発展に寄与する新たな前処理法、分離法および計測法や反応の解析法、装置開発、産学連携の事例、新たな視点での分析技術の応用など分析化学が産業界に果たす貢献について幅広く募集する。