実行委員長あいさつ

実行委員長(神戸大学大学院理学研究科) 大堺 利行 

今年の年会は近畿支部担当の第70年会です。人間でいったら70歳の“古希(稀)”になりますが,古希という言葉は,唐の詩人・杜甫の詩の一節「人生七十古来稀なり」に由来しています。そして,この一節には「酒債は尋常行く処に有り」という前文があるそうです。つまりこの詩は,「酒代のつけは私が行くいたるところにあるが,70年生きる人は古くから稀である」という意味になります。ただ最近は70歳まで生きる人は稀ではなくなってきましたが,本学会が70歳を迎えたことは兎に角めでたいことで,酒代をつけにしてでも祝杯をあげて良いことだと思います。

しかし,本年会はコロナ禍の影響で当初予定していた神戸大での現地開催が不可能になり,オンライン開催となりました。神戸牛のステーキをつつきながら,神戸ワインで古希の祝杯をあげることは残念ながらできなくなりました。

古希の次は77歳の喜寿ということになるでしょうが,喜寿のお祝いをするならば,ただ7年待つのではなく,さらに学会を発展させる必要があるでしょう。そのためには,学会の組織改革や財政再建も必要でしょうが,何よりもわれわれ会員が優れた研究成果を挙げ,分析化学という学問分野を活気付けることが肝心です。そして,その表舞台となるのが年会です。

本年会では,特別シンポジウムは行いません。近年,特別シンポジウムの数が増えすぎ,一般講演の会場に人がパラパラということもありました。そこで特別シンポジウムを行わないことで一般講演を活性化し,新しい研究成果の発表の場としての年会の“原点”に立ち帰りたいと考えました。特別シンポジウムがないので派手さには欠けますが,じっくりと腰を据えて分析化学を議論し,充実した研究発表ができることを期待しています。

本年会は,理・工・農・医薬の基礎分野から,工業製品・食品・環境・文化財など多岐にわたる応用分野の研究者・技術者が集う場です。オンラインではありますが,懇親会(オンライン交流会)も行います。是非,多くのみなさんにご参加いただき,実りある年会にしたいと思います。